鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子
かなり前に読んだ作品の番外編にあたるため、また少し忘れていた記憶と向き合いながら本を読む(笑)
母が、とってもニコニコしながら持ってきて早く読むようにと急かすものだから、それより前に一気に購入した本たちより先に読むことにした。
久々の単行本は、電車で立って読むと腕にずしっと重い。
この人の本は結構読んでいて、鹿の王はもちろんだし、精霊の守り人や獣の奏者とか、随分と前だけど読んでいた。
だから、たまに、ハッピーエンドで終わるばかりじゃないということも知っていた。
ネタバレしがちな母は、興奮した様子で「ハッピーエンドなの!」と言いながら私の本棚に置いていった。
ネタバレはまぁ、今回は許すかと思いながら読み始めて、リハビリみたいに登場人物を思い出していった。
なにより、描写や背景が深い。
それがこの人の、文化人類学者である作者の作品の特徴といえる。
ファンタジーなのに、というと語弊があるかもしれないけれど、ここまで歴史や文化の推移(その中にある、先人の思惑や後世の人間の過ちも)を描けるのはすごい。
あとがきから、作者がどうやって物語を作るのか、この話がどうやって浮かび上がってきたのかがわかった。
やっぱり、人は自分の身の周りに起こった出来事に影響を受けるのだ、それが創作活動に大きな影響を与えるのだ。
当たり前なんだけど、とっても人間らしいと思いませんか。
この話は、ほとんど西洋医学と東洋医学の対比をそのまま持ってきたもので、どっちが良いとか優れてるとか、そういう話じゃないことも、よくわかる。
よくわかるんだけど、何故だか自分は西洋医学を享受しているのに、概念や理念は東洋医学が尊いもののように感じてしまうときがある。
今の細分化された学問領域にもいえるのかもしれない。でも最近はまた全体や俯瞰が見直されてきて。
帯に書いてある言葉はひとつの真実だけど、ホッサルが絶対的に正しいわけでもない。
なにが正しいかなんてわからないけど、目の前の最善を尽くすだけ。
全部にそう言えるなぁと思いつつ。