生きるぼくら / 原田マハ
あぁ、どうしてこんなに匂いや景色が、言葉から飛び出してくるみたいなんだろう。
森の匂いや湿度の高さ、やわらかい土と眩しい日差し、そして、おいしいお米。
梅干しのすっぱさも、白ごはんのおいしさも、口の中に広がるみたい。
あぁ、なんて気持ちの良い本を書くんだろう。
ただただ、心が洗われるような、心の中に広がって、体験してないのに人生の感情が移ってきて、感動するってこういうことを言うんだろう。
この人は、綺麗な理論を持っているのに、感性に訴えかけてくる。
そんな不思議な力を持つ言葉の紡ぎ方をする。
そして、やっぱり同じ作者が描く登場人物は、なんだか似てる。
誰が誰にとか、どこがとかそういう具体的なことじゃなくって、
空気とか、そういうの。
この感じ、前にもあったなって感じる。
やっぱそういうものなんだな。
私はてっきり、純平の許さないからな、をすごく強く感じてしまって、稲をどうにかしてしまうんじゃないかとすごくドキドキしていた。
強くなるって、楽じゃない。
でも、ちゃんと生きて歳を重ねれば、あらゆることは経験になる。
そう思わせてくれたのは志乃さん。
ひととしてのやわらかさを持とう。
穏やかになろう。大きくなろう。
そう思わせてくれたのはマーサおばあちゃん。
真面目にやるって、すごい大事。
こつこつやってくって、すごい大事。
そう思わせてくれたのは、人生。
あぁこんな本を読んだら、おなかがすいてしまう。
どこかでがんばって作ってくれてる人がいるんだから、ちゃんと美味しいものにしないとね。
料理は好きじゃないとか、言ってられないよね。
食べることは、生きること。