On the way

思いつくまま気の向くまま

ふたつのしるし / 宮下 奈緒

いつ手に取ったかは忘れてしまった。

だいぶ前から本棚にそっと置いてあった。

この作者さんの本を一時期集めて、静かに鎮座したそれらを、少しずつ少しずつ開いてみることにしたのです。

 

いつ、この2人の物語は交差するのだろうと、思いながら読んでいました。

どちらの幼少期、多感な時期にも、さして共感はせず、ああそういうことってあるよね、という感覚も、どこか大人になったら自分が少し引いて見ている、他人事のように感じながら。

 

ただ、流れてくる文章の透明さがあった。

彼彼女には強く刺さった出来事も、刺さったことはわかっても、静かに流れていく文章が心を落ち着かせ、強い衝撃を緩和するようだった。

 

しるしのことはわかるような、よくわからなかったようなだけど、まぁきっと私の解釈が浅いということでここはひとつ。

解説に出てくる懐かしい歌が頭の中を反芻する。

 

昨日見たドラマ、マイ・セカンド・アオハルの、火葬場までいくあっという間に過ぎる一生を思い浮かべる。

 

緑の道を歩きながら、歩いているから目は瞑らないけど、両の手の指を少しまるくして、髪の毛を少し避けて、両の耳をすっぽり覆う。

空気がぶわっとかぶさって、多くの音が遠くになる。

耳は勝手にこんなにも音を拾っていたのかと驚き、覆ったほんのわずかな空間に生まれた自分だけの空気を存分に吸う。

ときどきこれをすれば、忙しい頭が少しリセットされそう。

 

気がつけば週末になるせわしない日々だけど、深呼吸は忘れないほうが良い。

そんなことを感じる、読後感。