On the way

思いつくまま気の向くまま

世にも奇妙な君物語 / 朝井リョウ

この「してやられた感」がなんとも言えない。
それとも、一晩経ったからそう思うのか、それすらわからない。

 

本当は、読み進めている途中まで、「私はあまり好きじゃない」とここに書く予定だった。

特に4話を読み終えたとき、本家「世にも奇妙な」の、あの独特な、嫌な、どろどろした気持ち悪い気持ちになる話と同じ印象を受けたから、朝井さんの本にしては珍しく、ぼろくそに言ってやろうくらいの気持ちだった。

 

5話の途中で、これまでの4話を回収し始めたなって思って、その話の醸し出す雰囲気とか、そういったもので、これで「一冊の本」と呼ぶのなら良いだろう、と、さも偉そうだけど、許すような、やはり作者の力量を感じたと言わざるを得ないだろう。

 

全5話の構成。

 

1話はね、別にいいんですよ。短編ミステリーみたいな感じで。

 

2話はね、ちょっとイラッとしました。設定や途中経過じゃなく、終わり方に。お前(=作者)結局どっち側なんだよ、なにが言いたいんだよ、みたいな。

 

3話はね、むしろちょっと好意的くらい言っても良い印象でした。終わり方含めて。おお(笑)、みたいな。
それにしたって、二宮金次郎は立っとけよ、と思います。猿蟹合戦とか、現実にそんな絵本ないよね?ほんとやめてほしい。

 

4話はね、最初から最後まで含めて、基本的に気持ち悪い。好きじゃない。
それにしたって、なんでこの人、こんな女性が書く文章みたいな書き方できるんだろう。でもどこかで見たな、この感じの文章・・・って考えていったら、有川さんの文章にちらちら似てたんだ。「ギャザーのはいったスカート、20代でしか履けない」みたいな描写もそうだし、それ以降の主人公のものの言い回しが、理詰めか屁理屈か微妙なライン(いや屁理屈だろ。)で主張をしてくる感じが、有川さんなら正当性のある側の人間が正しく使って反対側の人間をぎゃふんと言わせる爽快なもののことが多いのに、今回は正反対に使われ方をしていた。
そもそもこの主役が好きじゃない。
あと、無邪気に書いてたけど、あれは絶対悪意だと思う。

 

5話で、全て回収されたと思う。
こういった、役者が実名で自分を演じるドラマは実際にありそうだけど、役者の人名が明らかに誤字くらいな近似値だったから、私みたいにピンとこない人間からしたらわかりやすくて良かったかもしれないけど、それにしても実在の人物に寄せすぎだろーとツッコまざるを得ない。
コミカルな雰囲気とか、でもちょっとドキッとさせられる展開とか、終わり方とか、主人公(といって良いのかわからないけど)の目線の変化とか、全体的に好ましい話だった。


この5話があったから、この一冊に対する印象がガラリと変わった。最初にも言ったけど、ちゃんと完結したし、納得した。

 

なにより、作者のあとがきが大事。

 

私は、本家「世にも奇妙な」は、話ごとに当たり外れがあるし、特に嫌悪感を持つ気持ち悪い終わり方をする話は見たくもないから、正直、見ない。私にとっての「当たり」は、不思議な世界だけど終わり方はスッキリ、または不思議な感じ、あるいはハッピーエンド(これは珍しい)のもののことを指します。

 

あとがきにある「なぜそうなったか、理由付けを考えなければならない。理由を付けなくても、”世にも奇妙な”のタイトルで許される世界を作ることが自分にとってはストレス解消法」というところ、なるほどって感じ。

 

結局なんで桐島は部活やめたんだよとか、ハッキリしなかったと記憶している。

さすがに何者ほどの伏線回収とハッとさせられる感は短編では難しいけれど、同じ雰囲気というか技術というか、そういった部分は感じられた。

 

なんでこの本買ったんだっけって思ったら、表紙も素敵だし、そのとき読む小説なかったし、なにより、作者朝井さんだし、ってところ。

期待は一度裏切られ、最後には応えてもらった気もする。

 

それでも、「この本好きか」と聞かれたら、色々ごねて、素直に首を縦には振らないと思う。

 

やっぱひねくれてるよなぁと思う。私は勿論だけど、たぶん、朝井さんもね(笑)