On the way

思いつくまま気の向くまま

戸村飯店 青春100連発 / 瀬尾まいこ

「100連発」!なんて題名だから、てっきりギャグ小説かと思って読み始めてみたのに、違った。そもそも、瀬尾さんがギャグ書くかなぁという疑念もあったけど、やっぱり瀬尾さんらしい(とか勝手に言って良いのかわからないけど)作品だった。

 

友人から、タイトルだけ聞かされて、でもなんか絶対面白いじゃん!というよくわからない確信があった。いつ読もうかと思っていたけど、そのタイミングは予想より早くきた。

私の本棚には"読み待ち"の本が並んでいる。それらを抜かしてこの本を読んだのは、「あ、やばい。最近小説読んでない。補給しなきゃ。」という気分になったから。

本屋で黄色い表紙を見たときには「絶対ギャグじゃん」と確信したけれど、数ページ読んで違うとわかった。もちろん、電車で読んでてもにやにやする笑いどころはいくつもあったけど。

 

瀬尾さんの「あと少し、もう少し」という作品が大好きで、今回は兄弟の物語。大阪と東京の物語。大阪と東京のことは、ちょっとデフォルメというか、ステレオタイプな表現だけど、それがこの兄弟の受けた印象だと思うとすっと入ってくる。

 

あ、こういうのあるある、という感覚が散りばめられている。

最初は、どちらかといえば私は弟の方だと思った。器用な人間が側にいる、自分は不器用だと思ってる。

でも、読み進めていくと、もしかしたら兄の方かもしれないと思い始めた。一生懸命なのに、親切や別の意図でやったことが、伝わらないもどかしさ。いつの間にか、自らを語らなくなりその場をやり過ごすこの感じ。

家族兄弟でも、自分の意図や本音を汲んでくれるわけではない。

ときに家族より他人の方が自分をわかっていると思うけど、そうとは限らなくて、結論からいうと、家族も親しい他人も、自分の知らない自分を知ってたりする。

自分が認識している"自分"と他者が認識する"自分"の違い。前者を言い当てられればよくわかってくれていると思うけど、後者を言われるとそうなのか?と不思議な気持ちになる。

 

兄が最後にいう。

「無駄だったかどうかはわからない。(中略)無駄にした日を取り戻すためにも、そんな日も無駄じゃなかったと示すためにも、これから必死で身体動かして働いていかなくちゃいけない。」

 

大丈夫。無駄なことなんてなにひとつないし、全てが壮大な無駄かもしれない。(というのは、前に読んだ本の受け売り。笑)そうやって気負わずにいけば、きっと大丈夫。

 

「前に勤めた○○も、俺が働いているときが一番業績が上り坂で、俺が辞めた後はどんどん業績が悪くなっていったし、次に勤めていた○○も、俺が辞めたら事実上なくなったし、今のところは、どんどん伸びてる。俺には運がついている。というよりも、俺が幸運をもたらしている。そして家族の君たちも、同じように運が良い。運が悪い人はいない。これは間違いない。」

つい先日、そう言って片手を腰にあててピースサインをする父を見て、なんだかなにもかも大丈夫な気がしてきた。

たしかに、私はきっと運が良い。