そして、バトンは渡された / 瀬尾まいこ
本屋大賞にしては、静かな物語だと思った。
もっとはっきりしている作品が多いイメージだった。
けど、これはこれで、味わい深い。
本屋大賞は、豪華なフレンチではないけれど、美味しいイタリアンくらいのイメージだった。でもこの作品は、美味しい創作和食のようだった。
私は、まだ親になったことがないものだから、親の気持ちはわからないけれど、その片鱗でも感じ取れるものがある作品だと思った。
優子ちゃん
この子は、とても良い子だと思う。道徳的にとか、育てやすいとか、しっかり者とか、そういうことじゃなくて、人間として好きだなって思える人物像だった。
多感な時期も、どこか諦めた様子で過ごす優子ちゃんは、元々の性格か環境か、どちらかはわからないけれど、感情が動く相手と最後に出逢えたことはしあわせなことだ。
やっぱり彼は、森宮さんと似ている。
瀬尾さんの作品は、3冊くらい読んだことがあったけど、ちょっとどれとも違う気がする。これほど静かに進む作品があっただろうか。
森宮さんの言うところの感情が、自分に子どもができたら湧き上がってくるのだろうか。
それはまだ、わからないけれど、
自分の親が、きっと自分の想像を超える気持ちを持ってくれていることは、感じているし、感じきれていない部分もあるだろうということは、知っている。
親孝行しよう。