モダン / 原田マハ
彼女の、MoMAに対する愛情が生み出した作品だった。
元々、MoMAで勤務していた著者はMoMAを舞台にした、もしくはそれに関連する作品を沢山書いている。
そのどれをとっても、ああこの人はMoMAがとても好きなんだろう、誇りに思っているんだろうと感じられるものだが、これは、ただその想いだけで作られたような小品集だ。
MoMA。
ー近代美術館と称する美術館は数多くあるが、Musium of Modan Art と地名を冠しないのは、このニューヨーク近代美術館だけではないかー
そんな文章を、ネットのどこかで見つけた。
この作品に登場するMoMAの初代館長が実際の人物なのかわからなくて、検索してみたら、同じだったし、解説を読めば、他にも実在の人物をモデルにしたような登場人物が沢山いたようだった。
「暗幕のゲルニカ」でも取り上げられていた、ゲルニカの歴史についても、どうやら本当らしい。
嘘には、ほんのひとつまみの真実を混ぜたら、本当に聞こえる
昔、そんな言葉をどこかで聞いたことがある。
この小説はフィクションではないけれど、その背景にあるものはどれも本当にが含まれている。
正直、最初の短編「中断された展覧会の記憶」を読んだときはドキッとした。そして、「新しい出口」を読んだときは、ハッとさせられた、というか、じわじわと気付かされた。
芸術とか美術とかの、自由な広がりはどこまでいくのか、どこまで人は受け入れていくのか。
そのうち物事には、境界線がなくなっていくような気がする。
そのとき大事になるのは、自分の眼で判断する力だろう。