暗幕のゲルニカ / 原田マハ
最後のページをめくった瞬間、これで終わりなのだと知り、ひとり驚きの声をあげてしまった。
そしてしばらくして、じわじわとこみ上げてきたのは、
ルース、あなたの提案はこれですね
唇の端をあげてにやりと笑う、そういう気分だった。
この本は、どちらかというと、染み込んでくるような、訴えかけられるような方だった。
こちらが貪り食べる方ではない。
熱量に圧倒されたともいえる。
そしてもうひとつ、自分の無知を感じた。
歴史を学んできたはずなのに、無意識のうちに戦争の歴史からは目を背けてきた自分を知った。
小説の言葉でこれだけ感情が動くのだから、詳細を知ったら自分の心がどうなるかわからない。
(もちろん、小説の言葉だから、という側面もある。)
私は小学生の頃から戦争という言葉に悲しさと憤りを持つ子供だった。
中学に入ると関心は人間による地球環境の破壊に向けられ、忌み嫌う対象が人類そのものの時期もあった。
高校ではそういった想いが表現活動を通して昇華されたような、消化不良だったような、そんなところだ。
なにができるか、常に問い続けなければならないし、私たちは大人になるにつれて見て見ぬ振りと関係ない振りが上手くなりすぎてしまった気がする。
そんな振りをしたところで、現実世界はすぐ隣に、目の前にあるのに。
武器のかわりに自分はなにを持つのか。
絵筆か、ペンか、それとも。
本当の本当は、誰だって闘いたくはないのかもしれない。
本当はそう信じたい。
ペンは剣より強し。
小学生ながら、その人の伝記の表紙にある言葉に強く惹かれたのを覚えている。
自分のことすらわからないのに、世の中の行く先なんてわからない。
でも、しっかり見据えて、自分で決めて、声を出していくしかない。
思考を止めてはいけない。
最近、そんな言葉が聞こえてくる気がする。